朝、函館の上空だけが円く晴れている。底に取り残されたように月が貼り付いている。寒い。
  寒月や最低気温更新中   未曉
 兼題「雪解」これもヒマラヤトレッキングでの印象から…。
  雪解けの流れ余さずマニ車 未曉
 ネパールも山の民の多くはチベット仏教を信仰している。どんな小さな村にもチョルテンという仏塔があり、タルチョという経文が刷られた小布が幾枚も繋がれてはためいている。老人は手に小さなマニ車を回してお経を口ずさんでいる。マニ車は一回回すと一回お経を唱えたことになり回せば回すほど功徳があると信じられている。功徳とは輪廻転生、次の世での幸せな生まれ変わりである。村の中の小さな沢には必ずといっていいほど水車式のおおきなマニ車が仕掛けられている。自動的に回されるのだから回転数は多いだろうが功徳は碓いようにも思える。しかし逆に考えると貧しい暮らし、苦しい現世の裏返しでもありどんな回し方だろうが数多く回して来世の幸せを願う強い信仰心の現れでもある。それがヒマラヤの雪解けの小さな流れで回り始める…。あちこちで一斉に…。