季題「とろろ汁」
 とろろ汁といえば島牧時代こんなことがあった。下宿のばあさんがすり鉢で山芋をすり、出し汁でのばしながら味をみていた。「よし」とばかりに頷くと、左右の手に箸を一本ずつ持ちいきなりとろろ汁を左右の箸にまきつけるように動かしながら救い上げ、すり鉢から大きな丼に移したのであある。しゃもじやスプーンで掬えないとろろ汁は入っている器を傾けてしか移せなかった私には目を見張る瞬間の技だった。福井県を故郷とする家だった。
    とろろ汁箸に巻き上ぐ故郷(さと)の技   未曉
  季題「秋時雨」
 この前の豪雨のときの情景を借りて
    秋時雨放置自転車錆び深む         未曉