とろろ茗荷そば

 我が家の狭い畠の一隅に茗荷がある。茗荷はいつの間にか畳半畳ほどの広さになりそこから二人暮らしには十分すぎるほど収穫できる。そしてこれが美味い。夏の味覚の代表と言ってもいい。主として味噌汁で食べてきた。そして今回、そばとコラボレーションすることになった。我が昼食の主役、乾麺「新得そば」の助演者としてである。
 茹でて冷水で締めたそばをよーく水を切って丼に盛る。千切りにした6〜7個の茗荷をそばの上に載せる。私は丼の縁に沿わせて円を描くように載せる。その円の中に、摩り下ろした長芋を流し落とす。真っ白いとろろには卵の黄身がよく似合う。これで出来上がりである。夏の昼食は、簡単にできることも涼しさのうちだ。それ以上のトッピングは好みだが、茗荷の香りや味を生かすにはシンプルさも大事だろうと思う。最後に「返し」と「出汁」を合わせて冷やしておいたかけ汁を少し多めに丼の縁に沿わせて入れてやる。
 そのギャラの安さといつでも使える便利さが売りの乾麺「新得そば」が文字通り食われてしまう美味しさである。茗荷の強い香りと少し刺激のある独特の味をとろろと卵黄がやわらげてくれる。そばの食感と、シャキシャキっとした茗荷の食感が共鳴する。涼しい。
 乾麺には悪いが美味しい手打ちの生そばが手に入るのをひそかに楽しみにしている。