雨続きだったからだろうか登山道に大きな茸がその笠を広げていた。そのたびにみんながYamaさんに「これは?」と訊ねることになる。「食べられると思うけれど美味しいかどうか」と答えることが多い。こんな会話はきかれるが、ほとんどの人はもうすでに通り過ぎている。ここに残っていると言うことはどの登山者からもその程度の存在感しか認められていないからだろう。私も通り過ぎた。でも気になって振り返った。しっかり見えた。
   大茸食へるかと言ふ声ばかり    未曉
 有珠の国道端の直売小屋にYamaさんKUさんがスイカをお土産に買おうとして立ち寄った。私も冷やかしのつもりで車を降りた。何も言わずに試食の小鉢が差し出された。その中にはメロンがさいころ状にきられて入っていた。甘い。登り終え、風呂上りの喉に美味しい。Yamaさんが「この西瓜お宅で作ってるの?」と聞いたら、小屋の後ろのハウス群を指差した。目の前の西瓜が今採られてきたかのように思えてしまう。しっかり建っているハウスの中は緑がいっぱいである。どんな言葉よりも説得力を感じた。
   美味しさを説く西瓜売り背にハウス 未曉