私の家からJRを背に西へ少し歩いただけで西桔梗の畑地帯になる。今は一面雪が覆った白銀の起伏だがその中で働く一団がある。秋に収穫したジャガイモを積み上げ、シバレないようにシートや土をかぶせて囲っておいたものを市場の動向に合わせて掘り出しているのである。仕事をしている人の足元は、掘り返した土に雪が溶けてぬかるむ。まだ、春泥というには早いかもしれないが、来月の兼題になっているので昨年の句帳に未完成だったものを思い出し、余計な言葉を落として作句した。
  春泥に農夫長靴新しき    未曉
 NHK俳句の投句の締め切りの20日も近づいている。「卒業」「蕨」。山へ行くことの多い今は「蕨」の方が作れそうだが、いつのまにか「卒業」のあれこれを思い出してしまう。
 教師だから卒業に際しては一言かっこいい言葉を送ってやりたいが、実際はつつがなく式をとか、進学までのこまごました生活指導がどうとかしか話をしていなかったような気がする。やたら握手ばかりしていた。この子が?という思いの深い握手に出会う事もある。そんなときその子にとって言葉より雄弁なものがあることに気づかされ、わたしも思いをこめて握り返す。
  卒業の思い握手で告げられて 未曉