七飯岳・スノーシュー

 城岱道路のゲートから石切り場との境の尾根へ取り付き、石切り場の作業道路を伝うまではつぼ足で歩いた。七飯岳直下の牧場斜面にぶつかる尾根の林間入り口でスノーシューを履いた。つぼ足と樏で作られたトレースを辿り登って行く。枝をくぐり、樹間を縫ってのスノーシュー歩きの面白さを味わう。
 しかし、斜度が増してくるとそうも言っていられなくなる。表面はともかく内側ででも雪がしまっていてくれれば、スノーシューの先を突き刺し、底の歯で噛んで体重を預けられるが、今日のように雪にしまりがないと雪と一緒に流されて登りようがなくなってしまう。昨年も牧場斜面に飛び出るための最後の急斜面で難儀させられた。今年も予想されたので雪の様子を確かめながら登ったが私の体重を支えてくれるほどの締まりは無いようだ。勾配が急なところはただいたずらに雪を崩しているようになってしまう。
 さいごの10Mの所まで来た。勾配が急で直登は無理だし、そこには雪庇が張り出している。辿ってきたトレースも直登は避けて雪庇の切れている右側にトラバースしているが、それでも勾配は急で、私のスノーシューでは登れそうもない。私は雪庇の切れ目をめがけ、目で木の間を縫うように「く」の字を書き、それを下のほうから登ることにした。一足一足スノーシューをたたきつけるように雪に刺しこみ山側のエッジに静かに体重をかける。それでもスノーシューは雪面と平行になろうとする。膝が谷のほうに引っ張られるのを何とか踏みこたえながら体重を山側に倒すように次の足を出す。目の端でYamaさんが樏で直登している。「く」の字の少し上の部分から見ると雪庇の切れた所は雪が飛ばされているため積雪が少なさそうだった。そこをYamaさんが登っていっていた。私が描いた「く」の字は止めて少しくだり気味にYamaさんのトレースに合流してやっと牧場斜面に乗ることができた。七飯岳の頂上は牧場斜面の大三角形の頂点にある。その登りでも吹き溜まりが作った急勾配のところでは苦労させられながら登った。
 山登りの不思議な所は登ってしまうとすぐ苦しいことは忘れてしまうことだ。昨日立春。曇っていた空に太陽が戻ってきて少し汗ばんだ体が軽く思える。頂上から少し降りた南斜面で飯にした。先週、ばか常から見たあの白銀に輝く頂上で握り飯を食っている爽快さがたまらない。
 下りでもこのスノーシューは急斜面で私の体を支えてはくれなかった。どうやら、体重に合わせて大きいため沈み込みが少なくなり雪に締まりのない急斜面では雪を崩すだけになることのようだ。
 しかし、楽しさと辛さは隣合わせ。道具にオールマイティーは無いだろう。スノーシューが無ければ私は雪の山には立ち入れない。急勾配のところは慎重に謙虚に取り組ませてもらうことにしてこのスノーシューでまた来週も雪の山をあるかせてもらおうと思っている。