山眠(っていない)

takasare2007-12-13

 生々しい熊の足跡だけではない。山の動物たちも歩きやすいのか林道や刈払われた道を利用しているようだ。まるで目的に向かって作った自分たちの道のように真っ直ぐ歩いている。所々立ち止まったような痕はあるが、曲がったり余所見をしたりという気配がない。そして足跡は幾筋も延びている。一頭ずつ時差を変えて何度も通ったのだろうが、もし、これが同時に家族か仲間かで通ったと想像すると一挙にこの淋しい山道が楽しいメルヘンに変わってしまう。きっと夜だ。月明かりの下、冬毛で真っ白になったウサギたちが跳ねるように林道を登っていく…。遠い昔、ディズニー映画になかったかなー。
 一筋の兎の足跡と平行して狐の足跡も同じ方向に向かって付いていた。当然時差があるのだが、並んでいる足跡を見ていると想像に甘えてしまう。兎と狐が並んで歩いているのである。兎はゆっくり後ろ足にためを作って小さく跳びながら、狐は思わせぶりな歩調で夫々子育ての苦労などはなしながら…。そこに栗鼠が右手の斜面から落ちるように下りてきて「急ぐから」などと左手の笹にもぐりこんでいく…。
 60男の想像するメルヘンはすぐ生活臭が見えてきて限界を迎えるが、冬の山道は雪があるだけに堅くなった頭にメルヘンを思わせるほどの賑やかさを見せてくれるのである。
 鹿もいる。狸もいる。賑やかなのは厳しい冬を生きるための必死さの現れだ。冬、山は眠っていない。