腹の中の枝豆

 以前から私の胆嚢に二つの胆石があることはわかっていた。医者は、痛むとか特別悪さをしているわけではないので、手術で取り除くとかしなくてもいいでしょう。と言っている。医者がそういうので私もそうしている。
 1年に一回の胃カメラ検査のついでに、「エコーで胆嚢の様子や胆石の具合を見ておきましょう」という医者の勧めでエコー検査を受けた。その結果「何かありますねー」という所見から、今日腹部のCTを撮った。胃や大腸と違って直接カメラとかを入れられないので、この病院ではCTで診るのがベストの方法らしい。だいぶ慣れてきたが胃カメラはやはり辛い。エコーも姿勢を変えたり冷たい思いをしたりするのに比べ、CTは非常に楽な検査である。検査前に造影剤の点滴で注射針を射されるのと「息を吸ってー、はい止めてー」から、「ハイ楽にしてー」までが少し長いので苦しいくらいで楽だ。あとは寝ているだけでいい。支払いのときその分かどうか高かったけれど…。
 10分ほどで終わり、担当医の前に座った。「何かありますねー」と前回診断され、聞かなくてもいいのに「癌の可能性もありますか」と聞き「可能性としてはあります」と言われていたので緊張もしていた。コンピューターの画面には私の腹の輪切りが写っている。担当医が説明してくれる。肝臓、胃、そして胆嚢。画面を動かすことで医者には3D映像として見えるようだが、素人の私には無理だ。見ていて「これは俺の腹の中だよな」とわざわざ思わなければ、よそ事にしか見えない。自分の腹だと無理に思っても親近感はぜんぜん湧かない。メタボ腹だけはうなづける。
 カーソルが胆嚢に止まる。「これとこれが前に確認していた胆石ですね。」「そしてこれが今回見つかったものです…」患者はこの「…」に全神経が集中する。「胆石だと思います。ちょうど枝豆のように胆嚢の袋の中に納まっています。」と医者は言う。枝豆…。自分の胆嚢のありようが非常に良くわかる説明だった。「悪性のものの心配は無いので今まで同様定期的に様子を見ていくことでいいと思います。」で安心して医者の前を辞した。
 私は腹の中に、枝豆を育てているのである。胆石の転がり具合で激痛に苦しんだ人を知っている。私と同様、胆石を持っていながら何事もなっかた人も知っている。石とは思わずに枝豆と思えば…