余市岳・リゾートスキー場の陰

takasare2007-09-13

 早朝、3時起き、薄明の5号線を走って8時10分にはキロロスキー場最奥マウンテンホテルの駐車場に着いた。そしてがっかりした。林道へのゲートが閉じられている。錠前を確かめる前に、一般車両の乗り入れを禁止する旨の掲示文が眼に入ってくる。3.7キロメートル。登りだから1時間強か…。ちょうど、キロロスキー場のロゴをつけた作業車が来た。物ほしそうな顔で寄っていったが「乗って行くかい?」という声はかからなかった。
 写真を撮ったり、道端に見つけたボリボリを帰りに採ろうと目印を置いたりして林道を歩ききった。キロロスキー場最東端のリフト乗り場があり、そのリフトケーブルをくぐった所に余市岳の登山口があった。
 余市川の源流が近頃続いた雨で水量豊かに流れている。かろうじてつけられているような左岸の登山道を辿り、一箇所大きな岩に抱かせるように渡してある木を伝って渡渉した後は緩やかで歩きやすい登山道になった。さすがに花は少ない。何箇所かYaさんがボリボリを見つけて帰途の楽しみにしながら歩いた。尾根への登りに入ると勾配がきつくなり滑りやすい路面では手を使って登った。無理な姿勢で大きく足を上げたときに右の膝上内転筋がぴくっとした。気をつけなければ…。
 尾根に出る直前、北側にスキー場のゴンドラ山頂駅が見えて少しがっかりする。尾根に出ると、その山頂駅からの道が合流する。土曜日曜は、ゴンドラ利用で登山できるそうだ。高低差も無く楽な道だろうと思う。自分ならどっちを選ぶだろうなどと思いながら、その合流点を南に向かう。展望台と呼ばれる所に立ったが、笹の丈が高く、空が低いため、展望が狭い。あちこちの頂がガスをかぶっている。行く手に山が三角形に聳えている。尾根道が緩やかに蛇行しながら霧に隠れているその頂へうねって消えて行く。しかしそこは余市岳ではない。少しがっかりする。おまけに展望台からは急勾配を一回下り100m近い登り返しがある。少し萎えた気持ちを羊羹の甘さで取り戻してからまずそこを目指した。前方から、ホイッスルが聞こえてくる。入山ポストに書かれていた愛知の人らしい。くだりの途中で出会った。「北海道の山は熊が怖いですねー」と言いながら、独りで歩くのだからすごい。「頂上は紅葉がきれいでしたよ」と言い残して行った。鞍部の底から頂まですっかり見えるとすごい登りのように思えるが、視覚によるものでそれほどきついものでないことが多い。登り出せばそう時間がかからない。コツはひたすら同じペースで歩き続けることだ。
 この前峰ともいえるその頂上からやっと余市岳が霧をかぶってなだらかな曲線を見せている野が見えた。尾根に出てからはハイマツが多くなっていたが、道に張り出したマツに合わせて斜めになって歩いたり、木の根をまたぎまたぎ歩いたりしながらなだらかな球形の山頂部を目指した。昔山火事があって、そのとき焼けたハイマツ群が白骨のような樹幹の腰を同じ方向に曲げている。ハイマツが焼けて場所を与えられたナナカマドがその白骨をさらに焼かんとして葉も実も真っ赤に燃やしている。始めて見る景色が広がっていた。そんな自然の営みを鎮めようとでもするように観音様が祭られていた。誰かの悪意が働いたかのように両手首が接合部から落ちていた。そして誰かの善意だろう夫々の腕の真下にその手首は置かれていた。全身さびが浮いた錆観音である。さらにそこから300m、ハイマツの中の三角点を囲んでやっと昼飯が食べられた。