知内丸山(1)

takasare2007-06-26

 木古内を過ぎる頃からフロントガラスに微細な水滴がつき始めた。小谷石に着くと海岸は明るいが山はガスっている。道路は乾いているが周りがなんとなくしっとりとした感じでどうやら昨夜は雨だったらしい。
 前回は矢越小学校付近の登山口探しで時間を取られたが、今回は標識がつけられているので8時30分にはしっかりピンクテープで記された登山道を歩いていた。沢まで下り、対岸に渡って上りが始まった。尾根への取り付きはえてして急登になることが多いが、ここは、枝尾根に乗っても急である。尾根だからジグは切れないし、直登である。いつもなら花が足を止めてくれたり、慰めてくれたりするのだが時期なのか、Kuさんの「○○だ」の声が無い。代わりに、道を開いてくれた人たちが所々につけてくれた看板が足を停めさせてくれた。「八面樹」「百手観音」「千畳敷」「戻ろう坂」…山毛欅の古木の様や、地形をよすがにつけたようだ。その人たちのこの山に対する愛情が感じられる。道は土面なので自分の歩幅で歩けることも救いである。
 急勾配に思わず枝にすがると木が揺れて昨夜の雨が葉っぱからぱらぱらと落ちてくる。かかるのは私よりも後ろを歩いているKubさんなので、気になるがバランスを保つために手が行ってしまう。先頭を歩いている私は道端の笹や木の葉に乗っかっている雨粒で膝上がずぶ濡れになっていた。「風岩」という岩の横を抜けると樹林が切れ、たけの低い笹の斜面になった。そこも急ではあるが、その上は台地状になっているようで、急登が終わる予感がして少し気が楽になった。台地に上がると道が3畳ほど削られている。みんなが登ってきて一休みするからだろうか。そこで振り返ると、今登ってきた急斜面が見え、その下は海霧の白濁が谷も、それに続くはずの小谷石の集落も海も隠してしまって何も見えない。周りの山も見えない。「また来ることになるのかな」などと考えながら、これまた見えない頂上目指して海霧の下の背の低い樹林の中へ登山道を辿った。
 台地上の道は起伏は少ないが、たけの高い笹竹に分け入った。広い幅でしっかり刈り払われているが、取り除かれているわけではないので歩きづらい。笹竹の切り株が足をあらぬ方向へずらすので不安定この上ない。道をつけてくれた人への感謝でいっぱいなのだが…。その道がまた勾配を急にした。あえぎながら上を見るとどうやら開けている。なんとなく頂上の予感がするが、予定からするとまだでもある。半信半疑登りきった広場の中央に朽ちた木の板が置いてある。赤い字で「丸山」と書かれていた。その隣には一等三角点がある。頂上である。しかし展望は何も見えない。先日の矢越岳との関係を見ようと奥に進むと、これからのコースに掲げるべき看板が7〜8枚束ねられて置いてあった。まだ整備途中なのだろう。展望もないし、少し早いので、降りてから昼飯にしようと頂上を後にすることにした。
 途中にあれだけ楽しい看板があり、これからのコースにも予定しているのに、この頂上標識のみすぼらしさは
気になった。朽ちかけてはいても今までのものを大切にしようということなのか、頂上標識らしいコース途中の看板とはランクが違うものを今製作中なのかなどと、袴腰の頂上標識を建てた者として要らぬことを思いながら頂上に背を向けた。