谷地頭「満る大」

 久しぶりに美味しい蕎麦を食べた。大き目の皿に薄緑がかったまるで新蕎麦の様なそばが運ばれてきた。新装「まる大」の土日限定十割そば、850円である。一箸つまんで口に入れると蕎麦の美味しさの要素が一度に口に広がった。香り、食感、味、辛汁なしで十分食べられる。思わず「うまい」と口に出た。妻が「食べさせて」と言うほど美味しさが素直に出たのだろう。十割蕎麦なので短く切れやすいが、モサモサ感は無い。辛汁ももともと函館ではきりっとしているほうなのでよく合っている。そばの端に少しだけ辛汁をつけて啜りこむ。蕎麦の甘さが舌に触り、香りが鼻の奥に触れる。ワサビをつける。何もつけない。辛汁をつける…この蕎麦で850円は安いと思える量があり三様の食べ方で楽しめた。湯桶を少しゆすると濃い目の蕎麦湯になり、いつものようにさらしネギと余ったワサビで美味しくいただけた。
 最初に頼んでしまったので挽きぐるみの掛けそばも食べた。もちろんこの掛けそばは以前からと変わらずおいしかったのだけれど十割蕎麦の後味を壊さないために食べない方がよかったかな?と思って終うほどだった。
 新装「まる大」は広く小奇麗になった。以前は市電終点の「町の蕎麦屋」さんだったけれど、店の意気込みは、「函館市蕎麦屋さん」を感じるほど一気に広くなっていた。大きく広くなった途端にメニューがしゃれてしまったり、味が変わってしまったりすることが多いが、この店は心配なさそうだ。
 土日限定の十割蕎麦、楽しみが増えた。