日暮山・お礼登山

  あまり気乗りしないYaさんだったが、私にとってこの日の日暮山は意義深い。
 昨冬、連日の雪掻きで傷めた腰が無理したためか脊椎管凶狭索症なる病名が点いてしまい、10m以上連続して歩けなくなった。10以上歩けないということは、運動のほとんどができないということである。一時は、老後といわれるレッテルを貼られ、その時間を家で過ごさなければならないのかという暗澹たる思いも抱いた。
 効き目のない治療を止めたら少しずつ散歩の距離を伸ばせるようななった、傷みが薄れてきたから歩けるようになったのか、歩いたから傷みが薄れたのかはわからない。とにかく少し自信がついたとき、「そろそろ歩こうか」とYaさんから電話があった。1時間は歩けるくらいになっていたから「行く」とは言ったものの「かんたんなところ」と付け加えた。そこで決まったのが日暮山だった。
 登る前は、こんなところ登れないようだったら山歩きはもうできないなと悲壮な思いで登り始めたのを覚えている。頂上近く、腰は全く何事もなく、2ヶ月のブランクでダレきっていた尻の筋肉が突然の山歩きに悲鳴を上げていた。心地よい痛みだった。帰りの温泉で、「よかったー」と思ったものである。
 今日はお礼のつもりで登らせてもらった。のぼりも下りもあっという間で、全員物足りない思いだったが、一昨日降った戻り雪が、風のたびに枝垂雪となって落下する中を気持よく歩いた。物足りないと思うほど、あの腰の苦痛を忘れてしまうほど歩けるようになったことにニヤニヤしながら歩いていた。