変化(後)

 スパゲッティを茹でる時用のタイマーを6分に合わせ蕎麦を入れた。初めての蕎麦なので、吹き零れないかとか、ゆですぎないかとか気にして火のそばを離れずにタイマーを睨むようにして6分を経過させ、タイマーの音で火を止め、蓋をして蒸らし始めた。少し前に一本口に入れたら少し柔らかい感じがした。2分は長い。なべの中でそばがくっつき、団子になって融け始めているような気がして仕方が無い。結局、2分待てないで上げてしまった。急いで冷たい水で洗い締めて三分の一ほどを笊に盛り、年越し蕎麦の時の桔梗庵のたれの残りで食べた。やはり乾麺は乾麺として味わうべき味でしかない。しかし、つなぎが使われていないせいか口ざわりは乾麺に無い心地よさが感じられる。何より驚いたのは、蒸らしたことによる麺の延びが全く感じられないことである。考えなくても美味しくなくなる調理方法を書く訳が無いのは当たり前だ。
 残った蕎麦を湯煎し、いつもの竹輪と舞茸と長ネギと鶏肉の四目そばにした。これが予想外に美味かった。口ざわりはもちろん、ほのかにそばの香りもし、挽きぐるみの蕎麦の雰囲気が味わえるのである。「そば湯の取れる…」と言ううたい文句につられ、そば湯も試したが、まあまあ楽しめる。今までの蕎麦はゆでた後の湯の中に蕎麦の切れ端が見えるくらい透きとおっていた。
 もう一、二回試してみよう。今までの新得蕎麦から衝動買いしたこの元祖十割蕎麦に変わるかもしれない。