秋刀魚丼(1)

 先日、昼食にがんこ蕎麦の残りを食おうと思った。残りでもあるし冷たい蕎麦よりは…と考えたら急に温かいそばが食いたくなった。トッピングが何もないので自転車で昼前のスーパーに買い物に出かけた。かき揚げでも載せようかとケースを除いていたら、昼食用のいわゆるコンビに弁当が並んでいた。その中に、さんま丼なるものがあった。380円、安いし美味そうだ。ラップがかかっているのでよく見えないが、甘辛く味付けしたさんまの切り身が載っているようだ。ご飯にたれがしみこんだ様子が食欲をそそる。文字通り食指が動いたが、蕎麦は今日食べないと駄目になる。さんま丼は後日と言うことでその日はあきらめ予定どおり温かい蕎麦を食べた。
 数日たった今日。 
 11時スーパーに出かけた。さんま丼だけを目当てにまっすぐケースのあるところに向かった。無かった。カツ丼とか海鮮丼とか寿司とか、幕の内とかはあったがさんま丼は無かった。流通の関係かもしれないし、日替わりを意図しているのかもしれない。スーパーの昼飯買いはデビュー同然なので、その辺の事情はわからないが無いものは無い。カツや海鮮は食指が動かない。そのままどこか蕎麦屋にでも行こうかと思ったが、子どものお使いのように手に握っているのは500円玉一つで心もとない。もう一度ケースを見たが無いものは無い。
 作ることにした。さんま丼を食べたことが無いのでどんなものかわからないし、どんな風に作ればいいのかもわからない。以前テレビでやっていた「さんまの蒲焼」を適当にアレンジすればできるだろうと考えた。
 魚コーナーに行ったら、氷水にさんまが漬けられている。目だってまだ赤くなってない。一匹78円。太目のやつを選んで2匹買った。インスタントの味噌汁を買っても1食200円にもならない。賢い主夫だなーなどと自画自賛しながら家に帰ったら11時20分、いつもよりちょっと早い調理実習の時刻だが、今日は魚を捌いて、塩を振っておかなければならない。