大雪山塊の一でこ「富良野岳」(2)

takasare2006-08-27

 二回目の休憩地点には分岐の標識があり大きな岩壁にロープが下がっていた。分岐は、富良野岳方向と上ホロカメトック・十勝岳方向に分かれていた。富良野岳方向はこのままトラバース気味にまっすぐ富良野岳に進む。もう一方の道は、上ホロカメトックと富良野岳が作る吊り尾根上の分岐に至り富良野岳にも進めるし、上ホロカメトックを経て十勝岳にも進める道である。山谷さんの計画ではまっすぐ富良野岳への道を採り、帰りに吊り尾根を通って降りてくる予定を立てていた。この霧なので帰りはともかく、富良野岳へのコースを取った。その道は、石壁のロープで登ることから始まった。
 スカートの裾襞のような小さな尾根のアップダウンを繰り返しながら次第に高度を上げていく。立派な角材で作られた階段がいたるところに設置されている。この階段が苦手だ。もちろん登山者のためにあるのではない。特に火山灰が表土になっている山肌が雨で流れないように土留めの処置だが、自分のリズムで登れないため階段はいやだ。歩き易いし、緊張しなくても登られるからこれほど楽はないのだが…。わがままなものだ。上ホロカメトック方向への分岐がある吊り尾根に出た。風が強い。登ってきた反対の斜面から吹き上げてくる風で霧が眼鏡を濡らす。道は風の強いほうの斜面を足一つ分だけ削ったように付けられている。登りは楽になったが、足を踏み外したらどこまでも転げ落ちていきそうな急斜面が、霧の中に消えて行く。眼鏡をはずしてザックに入れた。益々深い霧で視界がないので、どこにいるかわからない。頂上がどこかもわからない。あるのは今来た道を進んでいると言う感覚だけである。山谷さんの話では、「あと一時間、頂上へは最後50mくらいの急登りがある」ということだったが、私の高度計とは矛盾している。さっきから、登りは急になっているし高度計はあと30mで富良野岳の標高1920mになろうとしている。あと一時間もかかるはずがない。と疲労から逃げたい一身で考えていたら案の定、Kubの「頂上だ」の声が上から聞こえてきた。頂上は深い霧だった。強風にも動きようのないような濃い霧に覆われていた。10時半だった。
 写真を撮った後ヤッケを着てそそくさと頂上を後にした。何も見えない吊り尾根歩きをやめ、来た道を引き返すことにした。尾根を越して風のない道端で昼食を摂った。昨日から背負っていたミニトマトをみんなに食べてもらう。怪我をすると大変なので、手で岩や木をつかみ慎重に降りた。それでも細かな火山礫の斜面では二度ほど滑ってしりもちをついてしまう。昨日の後ろ旭の下りもそうだったが火山礫の斜面はWストックが有効だ。でもそれは大岩の道では手が使えなくて不安だし…。下の分岐まで降りてきたとき、十勝岳に登ってきた人が上手にWストックを使って飛ぶように下っていった。やはり買うか。
 安政火口を過ぎて広い道に来ると晴れていて夏の太陽が照り付けてきた。だらだら下りの長い道を文句たらたら歩いた。「さっき後700mって書いてたけどもうそれ以上歩いたぞ」とか「ポカリスエット薄めた水は口がべたべたしてだめだ。ただの水が一番いい」「もう700以上歩いたべや」「俺こういう道嫌いよ」予定の登山を終えて、気が楽になったからだろう。風呂に入って一杯飲んで…
それを楽しみに歩いた。今晩泊ると思えばすぐ風呂、すぐ飲めるのがいい。