旭岳2299m

takasare2006-08-20

北海道最高峰は霧の中だった。自分ではピークにはこだわらない方だと思っているが、旭岳は北海道の最高峰としてこの足下にしたかった。頂上に立つことが目的だったので、まずは登頂できた事で今回の登山行の目的は達成できたことになる。
 姿見駅でロープウエイを降り、姿見池を見下ろす丘の「愛の鐘」に触れた。40年前、極寒の雪山で遭難死した若者の無念さを思った。そして、その遺体を取り戻すため毎週山に入った、今前を歩いているYaさん始め残された仲間の必死の思いを思った。
 振り返ると見えていた姿見駅も霧にだんだん薄れついには見えなくなった。森林限界はとっくに過ぎ、木も草もそして花も無い火山灰、火山礫の斜面をひたすら登った。Kubは調子がよくないのか、休む回数が多くなっている。私は超スローペースでできるだけ同じリズムを心がけて登っていく。遅れるがいつかは着く。道は爆裂火口から右へはなれ、大きな岩に手をかけて登るようになった。頂上直下には金庫岩と呼ばれる四角の大岩があるという。近い気がする。周りが見えない中疲れてくると都合のいい解釈ばかり先行する。きっと山の中で迷うということはそういうことなのだろうと思う。
火山灰と火山礫の斜面は道と道でない所の区別はほとんど無い。一度踏み外したら、濃い霧の中ではもう戻れない。登りは最高点は一箇所しかないからまだいいだろうが、くだりは少しの角度の違いがとんでもない方向に下ってしまう。旭岳山頂周辺はどの方向へも降りてゆけるのである。下りの方向を見誤らないように、コースロープが張られている。それに導かれ左に曲がりもう一度右に曲がる所に金庫岩があった。霧の中で弱弱しく見え、押せば転がりだしそうに立っていた。先頭のYaさんは頂上に着いたようだ。私は急ぐこともできず同じリズムで登るしかなかった。
 北海道最高地点は霧の中だった。記念撮影はフラッシュを焚かなければならなかった。
 深い霧は、私に鎮魂の思いで登山させてくれたのかもしれない。彼らの最期は視界のない中だったと思う。私の旭岳山頂が霧の中だったとしても不満は無い。