大千軒岳(1)

何回目の大千軒岳だろう。白神岬を回るまでは「絶好」と思っていたが、及部川河口から見た山の方角はガス雲をかぶっていた。山谷、工藤、坂口さんの車は花目的だから雨の心配さえなければルンルンドライブだろうけれど、柏倉と久保田は気落ちしているだろうと思う。6時に函館を出て、旧道口に私の車をデポし、新道の登山口は9時半、予定通りの時刻に登りを始めることができた。新道の登山口には大きなバスが止まっていた。歩き始めてすぐは結構急な登りだが、山谷さんの作るペースがちょうどいい。残雪、ギンリョウソウ、ツクバネソウ、春のボリボリに歩を停めたり慰められたりしながら高度をかせいでいった。50メートルくらいの視界はあるが、眺望、遠望はきかない。目はどうしても足元の花に行く。フギレオオバキスミレがちらほら見えてきた頃樹林がきれ、尾根に出た。今まででもっとも楽に登れたかもしれない。ツマトリソウゴゼンタチバナ、エゾグンナイフウロシラネアオイ、キンポウゲなどの花を従えるように尾根道を歩いていく。残念なのは、下が見えないので高度感が無く、花にあまり興味が持てない柏倉、久保田は楽しめていないかもしれない。頂上前で、大きな三脚を持った人に逢った。「頂上の手前で熊を見ました。みなさんは大勢だから安心でしょうけれど」と言っていた。あわてて、鈴をザックのポケットから出してもらい、鳴るようにした。頂上前記憶にあるフギレオオバキスミレの群落を目にして、標識しか見えない頂上に出た。