恵山(2)

 昼飯を食べていると、眺望のいい前方の権現様の祠の辺りにたくさんの登山者の影が動いている。やはり結構きているようだ。頂上は時折海霧が走るように流れていくが、晴れている。北側の噴火口のある斜面を登ってきた海霧がその尾根を乗り越えては恵山の集落に下っていく。海峡は恵山岬を回りこんできた海霧が多い尽くしてしまっている。瞬時360度が白くなってしまうが、恵山の集落部分だけがその熱気のせいか海霧を払いのけるようにしてその姿を見せてくれる。そのときだけ320度くらいの視界になる。
 風上にいたせいで人声も聞こえなかったが、思いのほかたくさんの登山者が祠の或る岩陰から姿を現してきた。バス一台分くらいはいそうだ。じゃあ静かになったろうと祠の或る場所に行った。ツガザクラ(だと思う)やミネズオウが可憐な姿を岩陰に風を避けるように咲いていた。展望台のようになっている所から見ても、やはり海峡は海霧の中だった。
  
 12:00丁度に下山を開始した。復路も同様奇岩の中を歩くだけ。火山礫で滑らないよう足元に集中して下りた。この頃続いているので,膝が楽だ。賽の河原東端のベンチで小憩して七曲コースを下り始めた。うどの新芽の部分を採り、ドウダンツツジのトンネルを抜け、一気に七曲のジグを下りた。下りきった所でタラの新芽をいただき、気持ちのいい林間の散策路を抜けて恵風の庭に出た。恵風に来て、ツツジを楽しんでいた観光客は花影から突然現れた我々に驚いたようだった。「山菜取りですか?」「登山です」寿美子さんは手にうどとタラの芽を持っている。それほどの違いはなかったろう。
 恵風の風呂に入り、玉村に寄って海霧の椴法華を後にした。