恵山(1) 

 寿美子さんが運動会の代休で山登りをしたいというので恵山に向かった。日の浜絡みえる恵山は裏側から盛り上がってきた海霧がもう少しで山を越えて浜に墜ちていこうとしている。雨の心配は無いだろうが、函館から続く頭上の天気が快晴なのでがっかりさせられる。9時30分ツツジ満開の恵風側登山口から歩き出した。海霧かぶりの空で薄暗い林間だがきちんと整備されていて歩くのは気持ちがいい。椴法華の人たちが言う、七曲コースの登りに取り付く。すぐ急勾配のジグが続き、たちまちカラスの声が足下から聞こえるようになる。磯ツツジの白い花が次第に数を増し、樹木が切れる辺りでは面として見られるようになる。
 
 旧椴法華側の登山道は、親切な整備になっている。少し親切すぎるキライはあるが、杭と細い丸太でステップがきってあるし、標識も多い。賽の河原に近くなったガレ場では、大きな石を階段状に敷いてくれている。そこには、ドウダンツツジの見事な林がトンネルを作ってくれている。恵山側から車で賽の河原まで登ってしまうより、遥かに登山気分が味わえる。
 賽の川原は白い海霧の中に隠れてしまっている。上り口の階段のところで10:30.寿美子さんは椴法華生まれで恵山は身近だったにもかかわらず、ここから上は登ったことがないという。ここから上には子どもの興味を満たすものはないということだろう。「こけの実」もここから上にはなくなるし、遊べる広場も賽の河原より上にはない。何も無いいや火山岩や火山が作る景観以外は何も見えない中をゆっくりしたペースでひたすら登った。銚子の海岸線も、噴火湾も、すぐ下にあるはずの賽の河原も海霧に遮られてしまっている。45分で頂上に着いた。去年9月岩崎さんを迎えた登山会で記念写真を撮った岩陰に風を避けて昼にしようとしたら、尻の後ろに「イワカガミ」が咲いていた。先日NHKのニュースで恵山が取り上げられ、この花が咲いているという情報を得てから、今日の目的の一つにしていた花だ。見つけることの下手な私は半ばあきらめかけていたときだったので嬉しかった。さっそく、カメラに収めた。11:20になっていた。