スパゲティ

 イタめしである。外国の料理の中では好きな料理がスパゲティである。理由は簡単、麺だから。レトルトを買ってきて、茹でたパスタにかけて食べているだけだったが、たまたま「基本のイタリアン」なる本を衝動で買ってしまい、「ことははずみ」、料理して食べることを楽しんでみることとした。
 麺料理を好む人は多い。私も蕎麦が大好きだが、他の麺類が嫌いなわけではない。ラーメンに誘われると無条件で一緒する。きっと味を絡めて食べるからだろう。ご飯だけより卵かけご飯が美味しいのと同じことだと思う。そうすると、他に食べる副菜が少なくて良いし、無くてもいい。そのことも含め、比較的簡単に調理できて食べられるし、それでいてこだわったり、こったりしようと思えば追求もしていける。スパゲッティが男の得意料理としてあげられることが多いのはそんな理由だろうと思う。
 もう一つ、スパゲッティがもてはやされるのは私も含め、日本人に潜む「舶来趣味」を簡単に満足させることができるからではないかと思う。サラダを添えてワインでもあったら見た目、十分メインディッシュになってしまう。そして、日本のせまい家であっても、食べるのが日本人であっても、外国のガイジンになれてしまうからではないか。そういえば、アメリカ映画で恋人同士がどちらかのアパートでする夕食は、圧倒的にスパゲティが多い。アメリカの場合は、移民だらけで舶来趣味は無いと思うが、アメリカ固有のディナー料理が乏しく、外国の料理を食べることで、簡単にできてそれでいて少し特別な二人の時間を演出できるからだろう。
 一人の昼飯では舶来趣味や、アメリカ映画気取りは発揮しようがないし、結局はただ作る楽しみを昼食に取り入れながら、無職男の昼食が変化に富み少しでも豊かになればいいと思うくらいだ。でも、本場イタリアならスパゲティはそんなものなんだろう、きっと。