「室町四砂場」東京室町

 銀座線三越駅で下りて室町方面の出口から室町4番地方向に歩き出した。黒塗り、日本風の入り口に砂場の文字、入ると、左手に大きなガラス越しに坪庭があって皿に日本的な雰囲気を作り出している。壁際の隅に席を取る。体のどこかが壁に接していないと落ちつかない。落ち着いたところで、酒を頼む。店自慢のかき揚げなどを頼もうかと思ったけれど、鞍馬で二つも食べてきたので、ここでは板わさにする。突き出しの漬物とゆっくり酒を楽しんだ。少しやわらかい辛汁できりっとしたそばがするするっと口に入っていく。香りと言うより全体的な蕎麦の味が口に広がる。酒のあとだからだろうか。
 江戸風の蕎麦ってなんだろうと聞かれたら、共通点は、その仕上がりの隙のなさのような気がする。締める水の冷たさ、水切り、少ない辛汁による緊張感、ほしいだけ箸にかかるもり方など客が意識したときに初めて気づくような気配りが一杯の蕎麦に込められているような気がする。特に、老舗と言われる、やぶ蕎麦、まつや、室町砂場を訪れて感じた「味」である。