「四捨五入」札幌白石

 道路に面してドア一枚のスナックのような感じで「四捨五入」が見つかった。しかし定休日。駅からそう遠く無いし明日の昼に再訪することにした。
 今日は探す心配が無いので、前から何度も通っているような足取りで入り口を開けた。ごくふつうの民家の勝手口を改造したようなせまい入り口である。70?くらいの靴脱ぎがあり、次に50?ほどの簀の子板でスリッパに履き替えるようになっている。左手に素人作りの靴棚がある。靴はそこに入れないと玄関がいっぱいになってしまう。引き戸を開けるとカーペット敷の居間風のというより居間に4ッつの椅子卓があった。部屋としては広いのだろうが、脚も立派なダイニングテーブルなので狭く感じる。飾り物、雑誌などもあまり統一性が無く、賑やかに置いてある。一つのテーブルはスペースの半分をパソコンが占めている 椅子も、低く重く重厚で蕎麦と言うより洋食の方が似合いそうな雰囲気である。客は夫婦が一組。蕎麦前を楽しんでいる。だんなの方がしきりに旨い旨いと言って酒を楽しんでいる。こちらも車で来ているわけでは無いが、函館駅からは運転しなければ成らずがまんすることにした。それにしても声高に「おいしい」「うまい」とうるさいやつだ。
 十割蕎麦と2〜2.5のそばの二種類ありどちらにするか聞かれた。十割で頼んだ。店はおばさんが3人が切り盛りしている。情報誌でみたおやじの姿は無い。蕎麦を打った後は寝てでもいるのだろうか。そういえば、ここは夜居酒屋にもなるらしい。おばさん達はエンジのTシャツに赤いバンダナで髪をしばっている。かっこいい。
 出された蕎麦は新蕎麦の色をしている。うまい。一口啜ってすぐ蕎麦の香りが鼻というか喉の奥をついてくる。たれは辛めだが蕎麦の先に少しつけて蕎麦の味を楽しみながら食べられる。できればワサビの辛みがもう少しあれば、蕎麦の甘味も楽しめるのだが…。陶然掛け蕎麦を追加した。おばさんが察してくれたのか十割だと延びやすいので、二八にしましょうかといってくれた。こんな時は店の人に従うのが一番。そしてこんな時はおばさんの方が説得力がある。もり蕎麦を食べ終わり蕎麦湯を楽しもうかと言う時にか怪我できて来た。蕎麦湯を止めてかけ蕎麦を引き寄せた。その段階で蕎麦の香りが鼻を刺激する。私の一番好きな、感動を伴う食欲が刺激される瞬間である。口触りも含め、一気に食べてしまった。濃いめの蕎麦湯で余韻に浸りながらこの次コンサドーレで札幌に来た時は、蕎麦前を楽しめるような時間帯で来て、二八のもりを食べ、かけ蕎麦で締めて…などと思っていた。隣の客はなじみらしく蕎麦前で食べた焼き茄子をおばさんに向かって盛んにほめていた。「今まで食べられなかった茄子が余りの美味しさに食べられたそれ程美味しかった。」と大きな声でしゃべっている。この次来た時は(茄子だけは食わねぇぞ)などと馬鹿げたことまで考えていた。