蝦夷松山〜雁皮山(2) 

「石楠花岳」という越田さんの声がした時、目の前に70?の岩が立ちはだかった。ロープはあるが、近すぎて力をかけずらい。リュックの重さも一緒にやっとこさ私の脚力で岩の上に上半身が出た。それから左足をあげようとしたがタイツ+ズボンの抵抗が大きいし、狭い所なので足が窮屈な状態になっている。もしかしたら脚がつるかもしれないなどと考えだしてあせってしまった。やっとのことで登ってしまってから(先にリュックを揚げてから登ればなんのこともなかった)と考えても後の祭りである。
 石楠花山のピーク(11時)は、東方向に開けているが、西方向の展望箇所もありしばらくの間、この前道を失った雁皮沢林道の辺りを俯瞰していた。そのうち小樽のお二人も追いついて来た。
 石楠花岳ピークの尾根を少し辿ると前方に雁皮の山頂が見えてくる。一度下がってから直登に近い尾根道が見える。木の間を道を探すようにくねくねと曲がっているトラバース路を、その木を左右の手でつかみながら体を道の方向に合わせ保持しながら進んだ。直登部分はたいしたことはなかったが、右側が笹原でそのまま谷へ落ちているので少し恐怖心を覚えた。
 雁皮山頂(11時20分)は、東側は下の方に寅沢林道を抱いて広い盆地状の谷が見える。そして三森山が対峙するように煙霧に青い姿を見せている。北方向は道が切れ、にしの方角は木で視界が遮られている。
 三角点の標石の上にガスボンベを置き、お湯を湧かした。そのための水で石楠花岳で苦労したことを少し思い出しながら握り飯を食べ、お湯の湧くのを待った。三つのティーパックを煮るようにして紅茶を煎れ、小樽の二人にも付き合ってもらって五人で飲んだ。ブランデーをたらし、快晴微風の山頂は最高である。しかしそのあとすぐ、(東京で歩みは苦しんでるだろうな)と思った。