「滝野庵」厚沢部町

 厚沢部町滝野にある。食べたい人は、車で食べに行かなければならないコンセプトの店である。木造の古い農家を生かして店鋪にしたようだ。土間、黒光りする板の間、畳の部屋、低い天井が落ち着かせてくれる。もり蕎麦(525円)を頼む。円いプラスチックの蒸籠に濡れた中細麺の蕎麦が出て来た。口に含むと香りと味が広がる。麺の水切れがよくない分舌触りは今一つだった。たれは少し甘めで麺に合っている。わさびをつけて食べると蕎麦の甘さが強調されてとてもアクセントになる。わさびがきりっとしていて蕎麦をひきたてている。大根おろしもついていたが一口で止めた。ワサビをつける、つけないの二味で十分楽しめた。さらしねぎは糸のように切られていて蕎麦湯を美味しくしてくれた。ただ、蕎麦湯は個人的な好みからだがもう少し重い感じだったらなーと思った。
 食べている内にかけ蕎麦のおいしさが予測できた。かけ蕎麦(525円)を追加した。うまい。すこぶるうまい。この次この店でもりかかけどちらか一つと言われたら、ちゅうちょなくかけをえらぶ。それくらいうまいと思った。蕎麦の舌触りがだんぜんよくなっているし、鼻の奥で感じる蕎麦の鄙びた香りがなんとも言えない。「もり蕎麦で蕎麦の仕上がりを判断し、これはと思う蕎麦の本当のおいしさをかけ蕎麦で味わう。」このパターンが私向きのようである。私はかけ蕎麦が好きだ。
 プラスチックの器よりは、皿にすのこの方がいいのにと思った。