「樽そば」小樽市色内

 妻が運河沿いの美術館やガラス工芸館などを見ている間に食べられる、という机上計画としては最高の位置にある蕎麦屋のはずが…ない。ソフトクリーム屋さんに聞いたら、「移転しましたよ。確か札幌の方って聞いたけれど」とのこと。
 今回の情報源である本には「極上のそば、酒と肴。粋で静かな空間」と言う見出しが付いている。しかし、ここは全国に名前を売った運河沿いの観光スポットである。歩いている人が求めているのは、粋や静かさではないようだ。人を集めているのは、ガラス工芸の店かお土産屋さんだし、食べ物関係では、ソフトクリームとか小樽の名物になったすし屋さんのようだ。粋で静かな空間とは正反対の賑やかで浮ついた空間なのである。そこを歩いている人たちは、自分の町の自分の家の近くに蕎麦屋があっても行かないような感じの人たちだ。私は、樽そばの店主に同情できたしここでは商売できず移って行ってしまったことが妙に納得できたのである。
 通り一本離れて「一福」と言う蕎麦屋があった。これも本に載っていたので暖簾をくぐった。老舗の町の蕎麦屋さんである。メニューも多い。入っている人は、風体から察するに地元の人である。いろんなものを食べている。天ざる、セット、天ぷら…。冷やしたぬき蕎麦を頼み、まず麺をつまんで食べた。更科っぽい麺でしっかりしている。おいしく食べることができた。「卵が付くんですが生にしますか茹でたのにしますか」と聞かれた。あわてて「どちらも要らない」と答えた。その後で(その分値引きしてくれるのかな)などと考えてしまった。そんな店である。粋とは正反対の店がすぐそばで繁盛していた。

  岩崎元郎さん講演会
 開演一時間前の午後五時に行き、「美瑛富士にトイレを設置する署名」への協力を手伝った。来場者はやはり、女性が多い。競輪場のホールはスクリーンもあり、使いやすそうだ。無料ならなおのこと。
 講演は、ふだん思っていることをざっくばらんに話していたようだ。高齢者の登山の有効性、新百名山の設定の意味とそれに対する自分のかかわりが中心だった。
 スポンサーである「救心」「山渓」「バイオテックス」の宣伝はこの人の活動の意義に比したら仕方のないことだろう。函館の力では、講演料を払えないのだろうから。
 坂口さんとの対談も単独行の坂口さんと、安心安全登山の岩崎さんでは噛み合わないのかはずまなかった
 恵山を新百名山に選定した理由として、三方を海に囲まれるように海に突き出した山の特異性をあげていた。私のように海があるのが当たり前に感じてしまっている者にはない、目のつけ所と思った。