青田

蒜沢川を歩き、鴉の警戒鳴きを聞いて、また黒い上着を着てきたことに気づく。頭の上を飛ばれるのもいやなのでその上着を頭上に振り回しながら鳴き声の下を通り過ぎた。本当に黒い色のものを着ているから警戒されるのかと思いながら少し歩いて振り返るとその鴉かどうかわからないが田の畦を一羽の鴉がひょこひょこ歩いている。まるで自分の田んぼを見廻っている農夫のように…。鴉にも田んぼにもまったく敵意などないのにあの攻撃的な鳴き声はなんなのだ。無性に腹が立ってきた。

  後ろ手の鴉に見廻られ青田  未曉