鵯渡る

 海峡というか津軽半島の陸影にたなびく雲が黎明から日の出に輝く経過を楽しみながら白神岬へ…。鵯の渡りを見るためだ。蝦夷中の鵯が南へ南へ渡れば白神岬へ着くことになる。緯度的に北海道の最南端ヘ集まる鵯の体内磁石の正確さに感動する。そして海峡20?南に津軽半島が見える以上そこをめざそうとする「渡り」の本能に驚く。日の出1時間後、空気が暖まったころに白神岬に着いた。先着の鳥撮りさんが、今日はまだだという。岬の段丘の低木林の中で待機しているだろう鵯たちはまだ静かである。
 以前はイライラしながら群れが飛び出すのを待っていたが、このごろはこの待っている時間もなかなか良いものだなと思えるようになってきた。ちょうどオーケストラが演奏前の音合わせのように所々から鳴き声をあげてモチベーションを高めているのだろうか…。やがて指揮者が指揮棒を一閃するかのように一羽が段丘上を撫でるように飛ぶと、他の鵯たちが一斉に後に続き飛び立ち一団となり海へ向かう。そのまま海峡へ向かう群れもあればためらい戻る群れもある。そろそろ鳴き声が聞こえだした。そして…。
  岬に満つ鵯海峡渡る決意かな  未曉
  龍ならむ鵯群れて海峡渡る   未曉
  鵯渡る白神岬捨つるごと    未曉