私の芭蕉十句
「飲み会という句会」と言うべきか「句会という飲み会」と言うべきか、要は月一回集まって句会の後にしっかり飲み会をする仲間が居る。その一人がある本を紹介した。全国三百人余の俳人に「好きな松尾芭蕉の十句」を挙げて貰い、点数をつけてその中でのランク付けをしているという。私も三千余句と言われる芭蕉全句に目を通したばかりなので、紹介してくれた彼がその本の巻末にあるランクを教えてくれる前に私の芭蕉十句を挙げておこうと考えた。
松尾芭蕉も、私が読んだ「芭蕉全句」の著者山本健吉も、和歌、連歌、古典、中国の詩歌、故事に明るく古語、文語に通じた上での俳句とその解説だから、私ごときが理解できる部分は非常に狭い。読んだと言うより目を通したと言うに過ぎない。私の十句などおこがましいし、以下に挙げた十句も巷間名句と言われているものばかりで、「芭蕉全句」など無意味ともいえる。ただ、一つの節目として他の人の見方、読み方と比べてみたいのである。好きな俳句と感想を記した。彼がランクを知らせてくれたらその感想を続編として書こうと思う。
1若葉して御めの雫ぬぐはばや 「俳句はすごい」と思った最初の句
2五月雨の降り残してや光堂 絵にも描けない美しさを俳句は表現できる
3雲の峰いくつ崩れて月の山 「月山」を詠む言葉の巧みさ
4閑かさや岩にしみいる蝉の声 絶妙の比喩
5蛤のふたみにわかれ行く秋ぞ 当意即妙のかけことば
6行く春を近江の人とおしみける 言葉のイメージで句を豊かにする
7蕎麦はまだ花でもてなす山路かな 季語の本意が生かされて
8秋ちかき心の寄るや四畳半 垣間見る芭蕉の心情
9菊の香や奈良には古き仏たち 取り合わせの巧みさ
10床に来て鼾に入るやきりぎりす 細心の観察から生まれる諧謔
○石山の石より白し秋の風
○五月雨を集めて早し最上川