乗初め

 歳時記は春夏秋冬の四季の他に「新年」がある。そこには、いろんな物事に「初」を
冠して「めでたさ」を実感しようとした時代が偲ばれる。乗り物が特別であっただろ
う時代の季語である。私が属する句会の初句座の兼題になった。
 数年前の元日「正月を箱根で過ごそう」と家族で埼京線に乗ったことがある。年越
しを埼玉の娘たちの寒い部屋でささやかに過ごしての元日だった。元日だったし早朝
ということもあって空いていたが、乗客の中にジーパンにダウンの若者がいた。手の
ビニール袋におせちの「折り」が見えた。その若者に勝手なイメージを持ちながら、
娘たちも東京で苦労しているのだろうななどと思ったことが思い出された。
    初電車
 バイト明け昨日の部屋へ初電車    未曉
 初富士や電車の窓にゆるぎなし    未曉