消し壺

 図書館や蔦屋に試験勉強の高校生が目立つ。私の時代は家の他に勉強する場所はなかった
し、それも泥縄式一夜漬けが常だった。寒くなった今時は暖房が茶の間の薪ストーブが一つ
しか無かったから勉強は茶の間ですることになる。始めからもうあきらめの心境になってい
るから言い訳のためのようになんとか12時までやって寝ようとする。すると母が起きてき
てストーブに残っている熾を消し壺に入れて残り火の始末をする。私は新聞配達の時間に起
こしてもらうことを頼んで寝る。その時の赤い熾火を思い出した。
    消し壺の蓋して闇に赤き芯   未曉