猫の恋

 我が家の庭の土を支えている擁壁の上を定時白い野良猫が通る。まるで大家が無為の店子を蔑むような視線を窓の中の私に送って通る。その猫が恋をしたらしい。相手は隣の家で飼われている斑の猫である。ところがこの猫は家を出してもらえない。日当たりの良い時風除室から外を眺めるのがせいぜである。その籠の鳥ともいうべき猫に恋をしたようなのである。二匹が風除室のサッシ越しに見つめ合っている。野良猫に対して「ざまぁ見ろ」と思いながらもどこかで「哀れだな」と思う。
    恋猫の朝はばからぬ大欠伸    未曉