産卵を終えた鮭には生きている証のようにその頭を上流に向ける。遡る力はない。そこにとどまるのがやっとのように尾鰭を弱々しく振リ続ける。流れが早くなり遡ることを諦めた時鮭の命はおわり、岸辺に打ち上げられる。鷲や狐に見向きもされないまま朽ちてゆく。
   ひたすらに山遡る鮭鱗錆びて   未曉