時雨

  夏頃から「芭蕉全発句」という本を読んでいる。文庫本で750頁という量もあるが、難しくてはかどらない。どういうふうに難しいかというとすぐ眠ってしまうくらい難しい。
 19歳の時の句からようやく貞享三年、43歳まで読みすすんだ。句で言えば「古池や…」が生まれた年である。この句は蕉風開眼の句とされている。著者の山本建吉は「人間の普遍的な感情や思想に根ざしたものだから、伝播の速度は意外に早かった。」「眼前只今の景を素早く詠んだこの句のウイットの力である。同時にそれがこの句の、歴史的な意味でもあった。」と解いている。この後、屋根を打つ時雨の音を聞きながら難しさに負けていつもの様に寝てしまった。「そういえば、芭蕉の忌日を時雨忌と言うなぁ」などと思いながら。
     小夜時雨貞享三年まで来たる   未曉