林檎

 隣町七飯町は林檎の街である。毎朝その林檎を食べる。新鮮でおいしくそのうえいろいろな品種のりんごが食べられて嬉しい。
 むかし、幼いころの我が家で食べていた「雪ノ下」という硬い小さな林檎を思い出す。甘みも少なかったと思う。きっと安い林檎だったのだろう。しかしその小さいリンゴも母は上手に三等分した。私はわれさきに大きいと思うものに手を伸ばし兄達と負ける喧嘩していた。兄弟が多いことを恨む食べ物の一つだった。まるごとのリンゴに齧り付きたいと思ったものである。
 今はリンゴが大きくなり齧り付いても一個まるごと食べ切ることができないから一口大にして食べることが多い。私にしてみれば上品になったものである。たまに突然マルごとのリンゴに齧り付くことがある。子ども時代を思い出しているのかもしれないが、心の何処かで林檎一個にまるごと齧り付くことが「若さの証明」になるとでも思っているふしもある。
    「異常なし」歯形真白く林檎食ふ   未曉