13/11/9・駒場から広野

 啄木小公園から漁り火通りを湯ノ川方向へ歩き、スケート場の入り口への取付道路へ曲がる。右手に広大な自衛隊函館駐屯地の敷地がフェンスを隔てて広がっている。戦争を放棄した国なのに。
 自衛隊は日本と言う国が持っている武器である。武器の目的は、黙らせるためにその銃口を人間に向けるものだ。対立する相手国から身を守るとは言っても結局は人や文化を殺傷するための道具でしかない。銃口を向けた対立者が同国人、同郷人、親族の例も歴史上枚挙に困らない。狂った人間が銃で罪もない人を無差別に殺傷する事件も後を絶たない。この塀の向こうに武器がある。それを操る組織がある。それを展開する施設がある。戦場を想定したものだろうか。土塁が施設内を目隠ししている。その土塁とフェンスの間の砂利道をランニングシューズの隊員だろうか走りすぎた。挨拶するような距離感ではなかった。
 自衛隊の正門前の横断歩道を渡ると駒場小学校である。市内で入ったことのない小学校の一つである。木製の看板があり遊歩道と書かれている。自衛隊との間の湯の浜へ抜ける道路際に、校舎に沿って黒松が校地を護るかのように続いている。誘われるようにそこに足を踏み入れる。落ち葉がやわらかく足裏をささえてくれる。黒松の幹の優しい曲線が小学校にふさわしい感じがする。駒場小学校の財産ともいえる場所に思えた。体育館の裏手を回ってグランドに入る。たくさんの教室の窓ガラスが初冬の日に輝いている。今日は日曜日だから子どもは居ないだろうと思っていたら、二階の辺りから突然子どもの声がした。もう一度日曜日だと言うことを頭の中でたしかめる。また聞こえる、先生らしき口調の声も聞こえる。部活のようなものかもしれない。少し驚かされ「変なおじさん」に見られないうちに足早にグランドを横切った。