風船

 私が子どもの頃我が家でも置き薬を利用していた。毎年時季になると薬売りがきて使った薬の代金を受け取り、新しい薬を補充した。母はお茶を出し、時には弁当を使わせることもあった。最後に小さな薬箪笥の一番下の引き出しから紙風船を一つ、母の側にいる私の顔を見ながら置いて帰って行くのが常だった。
    薬売り去ぬる框の紙風船   未曉
    紙風船母も少女の裔ならん  未曉