日記買う

 私は現職の頃から備忘録を使っている。教育の仕事では感覚的な捉え方が多い母親に学校での様子を伝えるには事実を語ることが最も説得力を持つと言うことに気づいてからである。感想や雰囲気を排除して出来るだけ事実だけを記しておくにはその日の内がいいので業者から貰った備忘録は重宝だった。
 だから退職後は必要無くなると思ったが、朝の打ち合わせもなければチャイムも鳴らない生活が始まると、忘れて困るようなことも忘れるようになってきたのでやはり使っている。内容は備忘録本来の意味「備忘」のためである。
 退職は3月なのでその続きのように4月始めの備忘録を買って退職生活をスタートした。3月始め4月終わりのサイクルの生活は小学生以来だし、周りの人も学校関係の人が多かったので気にならなかったが、退職して9年もたつと師走になると終わりだなーと感じ、正月になると「新年」を思う日本社会の仕組みが私の気持ちの中で根付いてきた。と言うより60年ぶりに戻ってきたと言うべきかもしれない。4月始めの備忘録を使うことがまだ現職時代に拘泥しているようで気になりだしてきた。
 そこで、4月始めの備忘録は今年で終わることにして、一昨日一月始めの備忘録を買った。さっそく来年のために忘れられないことを転記し始めたが、振り返ったり反省したり、懐かしがったりするにはやはり12月が良い。落ち着く。来年また始めようという気持ちが素直に出てくるような気がする。
 「日記買う」という季語がある。私の場合「備忘録買う」だが季語として使えるようになった。
   備忘録睦月始めに変へにけり   未曉