極寒のシベリアから渡ってくる鷲は旅の途中、八雲遊楽部川に寄る。広い流域を持つ川の幾本もの支流にまで登ってくる鮭を狩するためである。木に留まって動かない様、上昇気流を得て空を舞う様は威厳があって見ものである。残念ながら狩する場面は見られなかったがその眼光は想像できた。川原には熊や狐の足跡もある。
 大関地区にはいる少し手前、川が大きく蛇行するところでは制空権を持った鷲と、中州や岸辺を猟場とする熊と流れの中で必死に命をつなごうとする鮭とが生と死の営みの舞台となる。
 数の多さで対抗する最も弱い鮭は遡上が遅れているらしい。川の中にも魚影が少なく、産卵を終えたホッチャレも岸に見られなかった。
 昨年の記憶から
  ほっちゃれと呼ばれ川原に鷲の空   未曉