小春(2)

 確か週末は崩れるはずだったのに素晴らしい小春日和確実の朝になった。楽しい酒は大声を出しながら飲むので酔い覚めがいい。さけの影響がない登山になりそうだ。この天気でホームグランドの袴腰なら多少の寝不足は大丈夫だろう。取り付きの二ヶ所の登りで汗をかいたらそれもすっきりした。
 振り返れば函館も函館山も霞んでいる。風は少しあるが、全て葉を落としてしまった木々に音は無い。みんな少しタラーッとして小春の中の登山を楽しんでいる。
 葉を落としたばかりの傷口だらけの木々には今日の風は優しく感じられるだろう
   小春風葉痕の梢(うら)を撫でるごと  未曉
 赤川アメダスコースは登ったところが袴腰頂上だが、横津コースは頂上部4つのうちの最も低いポコに着く。頂上でないと言うだけで、足元から落ちていく大斜面やその向こうの庄司山、函館市街、函館山津軽海峡の俯瞰は頂上部分の景観を凌ぐ。私達も頂上にザックをおいてそこまで行く。案の定その景色を楽しみながら昼をとっている人がいた。
 もう山に花は無い。裸の木が山肌を覆っている。しかし、一本一本の枝に目を寄せるとその細い肌に生きている証がたくさんある。葉痕、花痕、葉芽や花芽も準備が始まっている。以前こんな裸木を見たことがある。
   裸木に葉痕可笑しき人の顔   未曉