一軒おいて隣の家の藤棚に薄紫の花が満開である。我が家の玄関前からよく見えるし、見てやることにしたいる。
 その家は11月から6月までは東京で暮らし、梅雨の時季から雪が舞い始める頃までこの桔梗町で暮らす。いる間は旦那が毎日のように庭に花木を育て、菜園の手入れをするが今は留守で放置されている期間だから雑草などは伸び放題になっている。

しかし生き物は正直で季節になると、水仙が咲きチューリップが風に揺れ、辛夷が満開で夕日に暮れ残り、藤が香りを放つ。夏の間丁寧に手入れをしているから見事である。しかしそれを愛でるべき人はいつもこの時期にはいない。折角咲いた花を誉めてやる主は最も美しい時にいないのである。だから私が見てやる。
藤咲きぬ香りぬ散りぬ留守の庭   未曉
我が家は更紗満天星躑躅が庭木の花も垣根の花も満開である。

  満天星の花鳴らす風吹かんかな   未曉