雨。さすがの五稜郭も今日は静かだろうと平山郁夫展を観に行った。
 玄奘三蔵のあとを追う芸術家の高い精神性を強く感じた。
 厳しい、時には不毛とも思える広大な自然の中につい玄奘の姿を探してしまう。見えない。しかし確かに玄奘はここを幾日もかけて横切ったのだ。そう思った時、広大な画面を凌駕する玄奘の意志の強さが見えてきた。
 インドや中近東の女性の美しさを一本の線で描き尽くすその筆力に感動した。唇から顎へ、真っ直ぐ前を見る瞳のみずみずしさや強さを線と僅かな色で描ききっている素晴らしさは、出る前に引き返して見に行くほどだった。
 入れ違いに高校生の一団が入ってきた。観賞授業なのだろう。若いときにこういう絵を鑑賞できることは幸せなことだ。年齢を重ねて再び観たときに更に深く見ることが出来るから。
   花の雨平山郁夫展出れば   未曉
   玄奘の旅展花の雨つつみ   未曉