環境の変化

 Sさんが転居し更地になった100坪弱の土地に二軒目の家が建ち始めた。大工仕事を見るのが好きなこともあり、私の家の台所にある小さな窓から何度も見てしまった。
 柱のない壁組工法というのか出来上がった壁や天井がクレーンで吊り下ろされ大工さんたちが積み木をするように組み立てて行く。少し厚着の大工さんたちである。今日は気温が低い上風もあるのでいっそう寒く感じられるのだろう。人ごとながら「雨が降らなければいいのに…」などと台所の小さな窓から見ていた。寒い中で工事していると寒い家が出来そうに思ってしまう。
 朝コンクリートの土台と足場だけだった所が夕方には二階建ての家の形が出来あがってしまった。そこでやっと環境が変化したことに気づいた。気づいても気づかなくても何かできるわけでもないが、私にとって大きな環境の変化になった。大切な七飯岳が見えなくなってしまったのである。Sさん宅は平屋だったからよかったが、その後二分割された土地の一軒目が二階建てで七飯岳が半分になり、今回もまた二階建てということですっかり見えなくなってしまったのである。我が家が新築当時南に多くとった窓から函館山、函館湾、町のネオンなどが見えていた。函館港の花火も楽しめたし、広い夜空の稲妻ショーなど見応えがあったものだ。それを江差への高規格道路とか言う高架橋がズタズタに切り裂いてしまい、今また小さな北窓に楽しんでいた七飯岳の景観も奪われてしまった。
 私にすれば資産価値の大きな下落だが固定資産税はこんなことで安くはならないだろうなとか、また、一軒目のすぐ西隣に建ったので一軒目の凝ったデザインも台無しだろうなとか、屋根からの落雪大丈夫かなーなどとか暇にまかせて余計な心配をしていた。環境の変化に無念さを覚えたとはいえ我ながらいやなオッサンに終止した一日である。