烏帽子へ一直線

 横津岳スキー場のゲレンデの真ん中を真っ直ぐ登る。今日の最もつらい登りだ。ゆっくり登ればいいがゲレンデのようなところだとどうしても急いでしまう。後少しでリフトというあたりで右に折れダケカンバの林に突入する。右にゆっくり傾斜する斜面をトラバースするトレッキングが始まる。
 背中にスノーシューは背負っているが、今朝のマイナス気温のせいもあって雪は固く締まっている。靴底のラバー部分が沈むほどでしっかり支えてくれる。夏ならば濃い笹藪の斜面だしやっかいなアップダウンも積雪がやわらかな曲面の連なりに変えてしまう。時々柔らかい部分を踏んだとき、踏み抜いてしまうが、私の足は地面に届いていない。ダケカンバの下部の枝は枝先を雪に閉じこめられて海老反りになっている。

雪渡り」という宮沢賢治の童話では、しみ雪、かた雪の上を歩いて狐の幻灯会に行くが、童心を失った我々には狐は出てこない。ただ真っ直ぐに見えてきた烏帽子岳の頂上に進むだけである。進路は真っ直ぐどんどん進む。その楽しさは童心のようなきもするが…。最短距離を行く我々に烏帽子岳はどんどん近くなる。
 烏帽子から袴腰への鞍部に降りる南東斜面に風を避けて昼飯にした。雪庇がなかったので暖かいその場所に座ったが、雪崩の心配はあったかもしれない。YamaさんとKuさんはその斜面でスキーを楽しんだ。
    雲影を追い追い抜いて春スキー   未曉
 帰りはさすがに雪も弛んで頻繁に踏み抜いたが、スノーシューは使わずにゲレンデ上部についた。YamaさんとKuさんは一本だけだったがしっかり楽しんで滑っていった。写真を撮っているうちにもう下まで滑り降りスキーを脱いでいる。私はまだだいぶある。ゲレンデの中央をどかどか歩いて降りた。