唐牛健太郎

 唐牛健太郎展2010を見てきた。知っているようで知らない唐牛健太郎氏のことを知りたかったからである。
 60年安保の時函館東高校二年生の私は入院していた。5月から11月の入院で出席日数不足から進級は無理と言われ、退院後も自宅で療養していた。その間に唐牛氏は全学連を指揮し逮捕され、国会構内に突入し逮捕されていた。私は病院や病気という厚い壁の中で本を読むだけの生活をしていた。
 翌春復学し、入学直後から活動していた新聞局で、入院していた期間に仲間が発行した新聞を改めて読み返したとき、その紙面に仲間の新聞局員も函館市内の「安保反対集会」に参加していたことを実感を持って知った。そして全学連の先頭に居た唐牛氏が5,6年前の同窓の先輩であることも知ったのである。
 一年留年したから学年に取りのこされた感はあったかもしれないがそれほど強くはなかった。私には新聞局があれば良かったからである。それだけに、東高校生のオピニオンリーダーを少なからず自覚していた高校生にとって先輩唐牛氏の闘う姿と新聞局仲間の勇気には取り残された感を禁じ得なかった。安保闘争のなんたるかも知らぬのに…。
 この夏、当時安保反対集会に参加した新聞局の仲間がNHKの取材を受けた。主旨は「地方都市の高校生でさえ反対集会に参加した…」ということらしい。全国の全高校生が「安保」を自分の問題として考えた瞬間を持っただろうその瞬間を私は共有しなかったのである。その気持ちが私をこの展覧会に向かわせたのだと思う。
 もちろん展覧会で見せてもらった範囲だが少し知ることが出来た。私などが唐牛氏のことを知ることに大きな意味はない。個人的なレベルで、唐牛氏を知ることによって私の50年前を人生の中に定着させたかっただけなのだろうと思う。
 同志や仲間、友人の愛情溢れる展覧会だった。展覧会という名称に違和感を覚えつつ。