写万部岳

 長万部豊野の国道脇の原野一面ににあやめが咲いていた。
   あやめにはあやめの空や雨近し   未曉

 口蹄疫防疫のたまの消毒帯を2箇所踏み越えて、写万部だけの登山口に着いた。すぐ後に小型の車が来たが、駐車場に入っただけで止まりもせずにまた出て行った。防疫行動の一環だろうか。単なる登山者、いわゆる人畜無害と判断されたようだ。
静狩湿原、海岸くらいまでははまだ見える。それ以上遠くは霧の中。もちろん登山口からすぐ上も霧で全く見えない。今日は雨が控えている天気予報が出ている。下山までは持つだろうと期待しながらその霧の中へ登り行った。滑りやすそうな赤土の林道から右折すると一合目の標識がある。標高差250Mくらいの山なので合目表示も短い間隔になる。小学生が「あとどれくらい」と聞くのと一緒で、短い間隔の合目表示は登る励みになる。コナスビ、ウマガサソウなどを写真に撮っているうちに三合目を過ぎた。10M程の視界の中を登っていく。少し勾配が急になってきたが、雨模様の天気のたった一つの利点、日射しの無さで楽な歩きが出来る。登り初めは涼しさも感じていたが汗ばんできた。雨は降れないでいる。
 五合目で休もうと思ったが、六合目が尾根に出る所であることを思い出してそこまで歩くことにする。六合目に出たからと行って何かが見える訳ではない。登ってきた斜面も、これから進む頂上への尾根道も霧の中である。林から出て、周りに開放感を感じながら甘いものと水分を口にした。
    雲を行く脚に薊の痛さかな   未曉
 尾根道は草がかぶっているし視界もないので初めてのKa氏は浮揚感のようなものを感じているかもしれない。薊の葉先が来ているものを通して痛い。何かを撮影しているのか後続の二人が少し遅れるともう視界の外になったまう。それを待ちつつ休みながら頂上に着いた。頂上で迎えてくれたのは、三角点の標柱と天測柱と頂上標識だけである。景色も花もない素っ気ない頂上である。昼飯は下に降りてからと言うことにしてそそくさと下山した。

 六合目から四合目は勾配があり、その分滑り易いので緊張させられた。そして3合目で遂に雨が落ちてきて雨具を剪ることになった。後少しの歩きと言うこともあり上着だけにした。来て歩き始めるとすぐ小降りになりそして感じなくなった。そのまま降りてしまった。
 登山口のプレハブ小屋の戸を引いたら開いた。窮屈だったが中に入れて貰って昼飯にした。
 帰途、静狩湿原でトキソウ、カキラン、ヒツジグサトンボソウなどを摂り、更には砂原砂崎灯台ハマヒルガオハマナスハマエンドウなど初めて海浜植物観察をした。ハマヒルガオ灯台のコラボレーションショットを得ることができた。来月号の「鳥雲」の表紙が出来た。
 結果的には登って降りただけの印象の薄い登山になったが、これも登山のうちである。