夕方、暖房を入れた。誘われるように蠅が一匹天井(多分)から下りてきた。そういえば東京から引き上げてきた娘の荷物の中に蠅叩があった。黄色いプラスチック製の物だ。暑苦しいアパート暮らしの中で五月蠅い蠅を叩く娘を想像した。どんな十年間だったのだろう。
   戻り来し子の東京の蠅叩   未曉
 ちょっと探したが見つからなかったので弱々しい蠅は見逃してやった。昔、蠅叩きが大活躍した頃は手の届くところにいつもあったような気がする。
   何気なく畳に置かれ蠅叩   未曉