写万部岳

 渡島半島の人間は道内のどこかへ行くとなればどうしても長万部は通らなければならない。そのたびに気になる山容の山がある。標高は低いが周りがもっと低いため少し鋭い峰が目に留まってしまう。写万部岳という。扱いは長万部町の裏山であり、噴火湾の最奥にある展望のいい山ということらしい。けれど、登山対象からは外されてきた。登山口100M,標高490M登り応えの問題であろう。
 しかし、遂に登ることになった。麓の静狩湿原が花観察が山行の大切な目的である我が山歩き隊にとっては十分過ぎるほどの付加価値でもあるからだ。
 長万部を過ぎて、静狩への国道から左折し高速の上をまたいで舗装道路を走るとやがて登山口に着く。低山なのに、長万部町の気持ちがわかるような登山口である。駐車場は広いし、トイレがあったりプレハブながら小屋の中に入山届けがあったりする。広く借り払われた登山道を登る。超狙いのYaさんを先頭にそれぞれのスピードで歩き出した。台風が室蘭沖を通過した後の見事な秋空である。
 1合目の標柱で大きく右折した後はほぼ、斜面に垂直な感じの登路である。空は秋模様だが太陽は強い。背中に熱く重い荷物を背負わされている感じである。ダケカンバが多いが、道を覆うほどではない。時折細い枝が作るわずかな日陰にさえほっとさせられながら歩いた。低かろうが急な所はやはりきつい。直登のような道が尾根へのとり付きでジグを切る勾配となる。ショートカットを一つ使って、一つつかわないで登ると頂上へ続く尾根道がくっきり見える。標柱は5合目。時計を見るとやはりかかっていない。後、800Mのアップダウンが見える。私は苦しいことがだらだら続くことに弱いからそれを克服するための些末な哲学をいくつか持っている。その一つが「尾根道は歩きさえすれば頂上へたどり着かせてくれる…。歩くことだ」というのがある。
 11時50分頂上着.。10時半頃の出発だから、途中蝶々で時間を取ったことを考えると良い時間だろう。あいにく頂上にガスがかかってこの山の売り物の展望が良くない。飯にした。
 帰りぎはガスが晴れて噴火湾を見せてくれた。静狩湿原、静狩の海岸線、噴火湾のパノラマが広がっていた。遠望が効けば、駒ヶ岳羊蹄山まで見えたに違いない。当別丸山にあるのと同じ、コンクリート製の天測点が立っている。一等三角点がふさわしい。
 帰りは、25分くらいで降りてしまった。その後、Kuさんの案内で静狩湿原沢桔梗のポイントへ移動したが、花期は過ぎて一輪撮影できたのみ。梅鉢草がきれいに咲いていた。YaさんKuさんはワレモコウでのゴマシジミ蝶の産卵シーンの撮影に成功して盛り上がっていた。
 帰りに振り返ってみたらそんなに気にならない山になっていた。