むつみ

 思いのほか時間を食ってしまい、家で昼を食べる時間がなくなった。そう思いながら本通の角を曲がったら、この先に「むつみ」があるのを思い出した。11時を過ぎたばかりで開店時間が気になったが行くと開いていた。
 玄関を入ると張り紙があった。「手打ち蕎麦は 幌加内産新蕎麦」とある。「手打ちでもり蕎麦」と声をあげる。機械打ちもあるし、その他丼ものも多い所謂そば屋さんだ。壁にまた貼り紙。「幌加内産そば粉100%使用(ブレンド無し)そば粉80%小麦粉20%…。」たしか、手打ちを食べさせる店としては古いはずだ。来たのはいつだったかなーなどと考えていると蕎麦が来た。
 緑色が濃い。新蕎麦は緑がかってはいるが新蕎麦でない蕎麦に比べれば…という話で、もし子どもに描かせたら絶対緑色は使わない色だ。しかしこれは緑だ。クロレラを入れていた竹老園に代表される釧路の蕎麦の色に近い。
 一箸口に入れる。香りが薄い。口ざわりもつるっとしていて私が蕎麦に求める味の素朴さが薄い。色が濃すぎてそれに惑わされているのかと思いもう一口食べたが印象は変らなかった。辛汁は辛口だ。蕎麦の端をつけて啜りこむ。期待した蕎麦の香りの広がる感じがやはり薄い。
 山葵を鮫皮でおろしてそばに乗せてすする。本山葵の香りはするがその香りのほうが強い。私が和s日に期待するのは蕎麦の甘さを感じさせてくれることだ。香りを殺すことではない。山葵は美味しいが…。陶器の皿にすのこを敷いているが、皿とすのこに隙間が無いために、水がすのこの上にでていて、最後の蕎麦が水に浮いている。最後の切れ端まで食べる私には、後味の悪さが残る。蕎麦湯は最初の客にも関わらず濃かった。作った蕎麦湯だろう。山葵、刻み葱、辛汁で美味しかった。やはり香りは薄かったが。
 かけ蕎麦も食べてみた。関西風で色の薄い甘汁で最初の一口は蕎麦を感じたが、それ以後は私には不満だった。これには柚子がついた。わかるが、新蕎麦は蕎麦の香りを楽しみたい。