味の花園

 メニューに「蕎麦」しか持たない蕎麦屋さんが増えている。時には、せいろ、鴨せいろしかないところがある。メニューに蕎麦だけの店は手打ちを食べさせてくれる蕎麦屋さんに多いし、新しく開店する蕎麦屋さんの多くはそうだ。なんとなく店主が蕎麦一筋に打ち込んでいるような印象を受け、それだけでおいしそうに思えたりもする。
 昨日行った「味の花園」と言う店は、蕎麦、うどん、ご飯物、ラーメン、酒に大別されるメニューに40くらいのヴァリエーションがある、いわゆる食堂タイプの蕎麦屋さんである。通りすがりに「手打ち蕎麦」と言う張り紙を見てマークしていた。前日、1時半ころ入ったら限定、売り切れ御免だそうで食べられなかった。そこで今日は開店と同時に暖簾をくぐった。
 手打ちでない蕎麦もあるので、手打ちとことわってそのもり蕎麦を頼んだ。
 笊にすのこを敷き、十分な量の蕎麦が出された。薄く打たれているので少し平たい感じがするが、私好みのちょうどいい細さの麺になっている。そのまま二口、新蕎麦らしく香りがいい。美味しく仕上がっている。辛汁はカツオの香りが残っていて少し辛目。蕎麦の端をつけるくらいでちょうどいい。大根おろしも山葵もどさっと付いている。私は山葵を楽しんだ。最後の一箸を食べ終わると、すのこに水が残り、そこに蕎麦の切れ端がひたっている。すのこがよくないのかもしれないが、折角の蕎麦が台無しである。蕎麦湯も開店早々だった所為もあり薄く、蕎麦の香りも味もしなかった。だから辛汁も山葵もたくさん余った。
 手打ち蕎麦が、食堂っぽい蕎麦屋さんのメニューにあるのは嫌いではない。蕎麦の本来的な姿のような気もする。「たかが蕎麦」である。へんに雰囲気を凝らした中で食べなくてもいいし、手打ちでないものより200円高いのもこの蕎麦なら納得できる。しかし、「されど蕎麦」でもある。水切りなどの仕上げや、蕎麦湯の楽しみに気を使ってくれたらなぁーと思いながら店を出た。