恵山・可憐

takasare2008-05-13

 まだ蕾のエゾイソツツジの陰にコイワカガミの濃いピンクが覗く。私の目は探すと言うことに本当に向いていないのだろう、ほとんどの場合誰かが見つけてくれたものを戻って見せてもらう有様だ。私が先頭を歩いていてもだ。そして、それ以降も私は探せない。その代わり花の方から私の目に飛び込んできてくれる。不思議なくらい見え出す。今流行の脳科学で分析してもらったら面白いのではないかと思うくらいだ。
 ぽつんと離れて二つ三つ寄り添って咲いているもの、小さな株を形成しているもの、赤の強いピンクの花もあれば、控えめにうっすらと刷くようなピンクの花もある。以前見た別な場所のコイワカガミよりも小さい気がするがコイワカガミは小さくていい。可憐である。
 恵山カルデラの外輪に続く尾根に出るとさらに小さな花が咲いている。花を探せない私には花と認識できないほどの小ささで、ガンコウランの島に霰か何かが降ったようにしか見えない。「ミネズオウはちょうどいい時期だね」とだれかの声が聞こえたとたん、花となって目に飛び込んでくる。他の人に気取られないように、初めからわかっていたようにカメラを向けた。
 液晶画面にミネズオウの花が大きく映し出される。花の中心部の濃い赤紫が白いはずの五弁の花びらを遠慮がちに染め、白と言っていいほどの薄いピンク色を見せている。その中で暗紫色の雄蕊がちゃんと雄蕊をしている。そんなことにも感心しながらシャッターを押した。下は晴れているが、恵山上部はガスかぶりで寒い。その上ここ数日の寒気で冷え切ったような風がふきつけている。それをやり過ごすかのように低い背をさらに低くしながらも一生懸命咲いている。可憐としか言いようがない。「峰蘇芳」と書く。小さい花の割りに大きな名前のように思えた。